幼児や高齢者の場合は,それほど性別の差を大きなものとして考える必要はありませんが,問題なのは女性の初潮開始年齢から閉経期近くまでです。初潮開始の前後に,激しいスポーツのトレーニングをすると,月経不順の原因になることがあります。
スポーツの中でも,水泳は特にその傾向が強いという見方もあるくらいです。しかしこのことは,一流選手と同年代のスポーツをしていない者とを比べた場合に限定されています。
このことを,妊娠から出産にかけてみていくと,むしろ妊娠中毒の発生がいちじるしく少く,たとえ発生した場合でも全体に軽症で済むというのです。また分娩所要時間が短かく,産後の母体の回復も速やかで,産児の発育も順調といわれています。
しかし,女性=妊娠=運動と短絡的に結論付けてはいけません。たしかにここ30年ほどで,妊婦が水中で運動することに積極的になったことは,業界団体の利益ばかりでなく,妊婦の精神衛生上に意義のあったことだと思います。女性がスポーツをしやすくなったという意味ではいいことですが,ここでいう身体の発育や発達を,マタニティ・スイミングにあてはめるには,かなりの無理があります。
男女の性差を総合的に見てみると,男性の体力低下は個人のことだけに留まりますが,女性が弱くなれば子々孫々にまで影響するということもできます。女性こそが運動によって,積極的に骨格筋を鍛練することが,ますます必要になってくるのではないでしょうか。