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水泳の基礎知識と泳ぎの理論

水の抵抗

水中運動でメリットになる「水の抵抗」は,水泳にとっては他のスポーツと比較にならないほど重要でしかも複雑な要素を持っています。水泳の推進力の大部分は,水の抵抗によって得られた反作用から生れます。そしてその推進力によって前進しようとする人体は,次の瞬問から水のさまざまな抵抗によって前進を妨げられようとするのです。

つまり同じように手のひらと前腕部で水を掻くと,同時に上腕部が抵抗を生み出していることになります。また例えば平泳ぎで,蹴り出すときの足の裏の抵抗が強力な推進力になっていると同時に,大腿前部の抵抗は大きな妨げなっているのです。これは車のアクセルとブレーキを同時に踏んでいるようなもので,はなはだしいエネルギーのロスだということができます。

水の抵抗は速度の2乗に比例すると書きましたが,ある速度の限界を越えると,抵抗の値は想像以上に大きくなります。クロールの脚の動きは,尻やひざや爪先が複雑に動きます。蹴り下ろそうとするときは,まずお尻が上りはじめ,つぎに膝が出て爪先はその反作用で,足の裏による蹴り上げがあります。

次の瞬間にお尻はさらに上り続け,膝も上って伸され,爪先は強力な足の甲による蹴り下ろしがあります。この動きはそのまま次の蹴り上げに結びつけられ,膝と爪先は上方にむかいますが,お尻はテコの作用として下方に下ります。この複雑な動作は,左右にX型のもっと複雑な動作になります。

膝からける効果の悪いキックでは,蹴り上げのときに下腿部が大きな抵抗を生むばかりでなく,お尻の後ろや足のまわりに大きな渦抵抗を生じます。それでは脚の動きが正しければすべて良いか,というとそうとも言えません。

またスピードが増してくると,脚による余計な動作が,腕による推進力を殺してしまいます。これがピュアーな2ビートのクロールが出現することに結びついたのですが,しかしキックの数が重要なのではありません。腕による強力な推進加速が加わっているときに,余計なキックをしないことが重要で,腕による推進加速が少ない瞬間には,脚のキックによる加速は有効に作用します。また魚や凧などの原理から,長く伸して漂っているように見える脚が,重要な役割を果していることも重要なヒントになります。

[更新日]2017/05/03