血液循環の原動力となるのは,心臓だけではなく血管と骨格筋があります。血管が硬くなって骨格筋が衰えてしまった人は,心臓だけで血液を送ることになるために,心臓の役割が大変重要になります。心臓自体にとっても,心筋に栄養をあたえる冠状血管の機能が良好に保たれていなければならないわけですから,血管が充分な弾力性を保持できるように,普段から気をつけなければなリません。
心臓や血管系に生じる故障の原因のうちで,自ら責任をもたなければならないのは食事のほかに精神ストレスがあります。しかし食事の質と量だけの工夫をして,運動不足の害を少なくしようというのは心臓や血管にとって,決して良い結果をもたらすものではありません。また,精神労働者に血管老化の進行が早く,脳溢血や心筋梗塞などが多発する事実から,精神ストレスとの因果関係が注目されています。
運動でストレスを解消する効果は,室内で娯楽に興じるより,運動中枢が興奮することによる特別な効果があるといって良いでしょう。その同じスポーツでも,特に水泳がストレスを解消する効果が高いのは,筋肉活動の質が他のスポーツとまったく異るからと考えられます。
陸上スポーツの基本姿勢では,常に下半身の最末端である足底筋群から脳に信号を送り続けています。いいかえれば,それ以外の情報はかならず足底筋群からの信号の影響を受けることになり,足底筋の影響から解放されることはありません。
つまり足底筋群の拘束から解放された,大筋群のみからの情報で運動ができるのは,水泳しかないといえるのです。このようにスポーツの重要性は,日常的でない様々な筋収縮をおこなわせることにあります。陸上におけるあらゆるスポーツをおこなえばおこなうほど,水泳のような異質のスポーツを多くおこなうことが,ストレスを解消する有効な手段であると考えられます。