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バタフライのストロークテクニック

バタフライは平泳ぎから発展した泳ぎで、近代四泳法の中で最も新しい泳ぎです。今の平泳ぎのキックにバタフライのプルのように水上をリカバリーして泳いでいた時期もありましたが、ドルフィンキックが開発されてからは、現在のスタイルになりました。そのドルフィンキックを初めてやった人が、日本人の長沢二郎氏だと言われています。

1952年の第15回ヘルシンキオリンピック大会は平泳ぎに含まれていましたが、1956年の第16回メルボルンオリンピック大会以降平泳ぎとバタフライに分かれました。現在の競泳のバタフライは、ドルフィンキックと両腕の空中リカバリーが用いられています。

水泳の記録から見ても、バタフライはクロールに次ぐ二番目のスピードがある泳ぎです。バタフライによる記録更新が激しい時には、一時クロールより速くなるのでは?と言われたこともありましたが、理論的に考えるとバタフライはストップアンドゴーであり、連続してスピードの出せるクロールに勝てないことがわかりました。

腕による推進力でスピードが出ないと腕を水上に上げにくいことから、難しい泳ぎのように思われていますが、浮力を上手く利用したフライドバタフライをマスターすれば、そんなに難しい泳ぎでないことが分かります。

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バタフライの腕のリカバリー [recovery]

バタフライの腕は平泳ぎが水中なのに対して、両肩は水平に保たれ、腕は肘が自然に曲がった状態で水面上を左右対称にリカバリーします。
ストロークのフォロースルーで外側に抜ける動作が、水面上に腕が同時に抜けるのを助けます。

腕が真っすぐすぎると腕や肩の筋肉の緊張が増して、リラックスしたリカバリーを妨げることになります。肘は肩が柔らかいからと言って極端に曲げても同じ結果になります。肘は直線状を真っすぐ前方に運ぶのが有利だと言っても、スムーズなストローク動作を妨げてはいけません。

リカバリーを左右対称に行うためには、腕が同時に水面上に抜けなければなりません。このことがリカバリーを同時に行うことにつながり、泳法上のルールを満たしたことになります。

更にバタフライの腕のリカバリーは、常に水面上を移動しなければなりません。疲れてきて腕が水面上に上がらなくなったり、肩が水面近くになったりすることがあります。腕の一部分でも水中に残った状態になると、進行方向とは逆の前進を妨げる抵抗になります。

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バタフライの手のエントリー

リカバリーされた腕の延長線上にあるのが手です。その手が水に入る(エントリー)位置は肩の延長線上になります。親指を少し下へ向けて入水することによって、水を撹拌したり泡を水中に盛り込むことなく滑り込ませることができます。

リカバリーで腕を前に運ぶことができないとエントリーが広くなりすぎてしまいます。このことでプルが短くなってしまい、十分な水のキャッチができなくなってしまいます。

逆にエントリーで両手が近すぎると、両手が肩の延長線上を越えて内側に入りすきると、両手がタッチするような形でエントリーは頭の前になってしまいます。これは泳ぎに深刻な影響を与えませんが、水をキャッチするまでの時間が遅くなることで、プルによる推進力を得られるまでのロスになります。

エントリーが深すぎると、手を前方に伸ばすことになり、肘落ちの原因になったり、親指を下に向けずに入水すると水を叩いてしまい、水中で乱流を発生させてしまい、推進力の妨げになります。手を前方へ放り投げたりせずに、丁寧なエントリーを心掛けます。

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バタフライのプルパターン

平泳ぎと同じように、バタフライのプルパターンもスカーリングによる推進力を得ます。

入水した手が水をキャッチすると、指先でキーホール(鍵穴)を描くように水中を移動し、直線の少ない曲線のうねうねしたパターンを描くようにします。このバタフライのプルのパターンをキーホール・プルと呼んでいます。

プルパターンは、外側へのスカリング、内側へのスカリング、そしてフォロースルーの3つの部分に分けることができます。はじめの二つの部分では手は平泳ぎと似た楕円のパターンを描きます。そして、手が胸の前で近づいたあたりからもう一度外側へスカーリングを行い、ヒップをこえるまで手はしっかりと後方に伸ばします。

外側へのスカーリングは、手のひらを外側開き、角度をつけて開きます。次に内側へのスカーリングは、ヒジは高く保たれたまま両手を肩のあたりまで近づけます。

このポジションにはバリエーションがありますが、最後のフォロースルーを効果的に行うためには、内側へのスカーリングは、大体胸の下あたりで完了しなければなりません。内側へのスカーリングの終了はほとんと両手がタッチするくらいにまで続けられます。

その後、フォロースルーは両手が外側へ回転し、ヒップを越えるまでしっかりまでしっかりプッシュします。

最も効果的なバタフライのプル・パ夕ーンは、プルを通じて手のひらの角度が変化することです。つまり、手のひらが常に水圧を感じるように動かし、水圧の変化を感じ取りながら強いプルを維持することによって、安定した強い推進力を生みだすことができるのです。

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バタフライのキャッチ

バタフライのストローク中、キャッチは手が水中に入った後、手が肩の深さ位から始まります。入水すると手はちようど肩の前にあり、少しヒジか上がったハイエルボーの状態になります。

このポジションは手がキーホールプルの最初の段階で、外側へのスカーリングのために開き始めるタイミングになります。この時手が肩の深さまで沈まないうちに、キャッチを早くし過ぎて止まってしまうと、結果として上半身が上がる動作を引き起こしてしまい、行き過ぎたからだの上下動を引き起こし、の推進力を減少させてしまいます。

また、キャッチを急ぎ過ぎて、手に体重が乗る前に早めのプルが始まると、上体が浮いてしまい水を十分つかむことができないので、最も推進力が得られる内側へのスカーリングに結び付けられず、爆発的な加速度が得られないことになります。

キーホール・プルを行うためにはヒジを常に高く保たなければなりません。プルのはじめでは、手首は前腕の延長線上にしっかり固定され、しかもキーホールのプルパターンを通じて手首の角度を変化させるため、水圧を敏感に感じとるために手首が柔軟でなければなりません。

この手首のコントロールが上手くできないと、ヒジが高く保たれていてもいなくても、手首が落ちてしまうことがあります。トップスイマーでも疲労の蓄積によって、ヒジは高く保たれていても手首を落としてしまうといったことが起こります。

水面上から見るとプルの動作がヒジや手首を高く保って行われているかどうかを観察するのは困難でが、水中で腕が速く動きながら、小さな推進力しか得ていな状況で判断するしかありません。

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バタフライのプルで陥りやすい欠点

プルがワイドすぎて、入水後に手が外側へ大きく開きすぎると、キーホールの最初の円がストロークの大半を占めてしまい、その後のフォロースルーが小さくなった分だけ、加速が加わらなくなります。

逆に最初の円が小さかったり狭すぎると、キックのタイミングにも影響が出たり、スカーリングの効果が得られなくなってしまい、推進力が減少してしまいます。

外側への適度なスカーリングができれてキックのタイミングが合えば、内側へのスカーリングは容易で、左右の指先が触れるくらいにまで描きこむことができます。ここまででしっかり水を抱え込むことができれば、最後の段階へ効果的な影響を与えることができます。

内側へスカーリングをするとき、肘を高く保ったまま指先から抱え込むように描きこまないと、キーホールプルでなくなり、直線的なプルパターンになってしまいます。ストレートなプルパターンは1キックのバタフライのタイミングであり、2キックのバタフライのタイミングは、このキーホールが上手くできるかどうかにかかっています。

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バタフライプルのフォロースルー

バラフライのフォロースルーは、キーホールプルが終わりかけたころ、つまり手が内側ヘのスカーリングを終えたところから始まり、指先がヒップを越えて腕が伸び切ったところで終わります。手による推進力の加速はストロークを通じて大切ですが、このフォロースルーは特に重要です。

プルのスピードが増すにつれて、手がしっかりと水を押さえ続けますが、プルが終わればできるだけスムーズに手を水中から抜き上げますが、この時肘を曲げるのと同時に手のひらは内側を向けて、抜き上げの時発生する乱流を最小限に抑えることが重要です。

腕がしつかり伸ばし切るまで水をプッシュしないと、ストロークのフォロースルーは短くなってしまいます。また、この動作で間違いやすいのはは肘が曲がった状態では水中から腕を抜き上げにくく、スムースなリカバリーに結び付かないので、水をしっかりプッシュして最後までストロークを行わなければなりません。

バタフライは一定のスピードで手を動かして泳ぐことばできますが、プルを通じて加速的にスピードを増加させて手を加速させないと、プルを終えたときの勢いによる惰性がなくなり、腕を水上を運ぶリカバリーでも、余分な力を必要とすることになります。

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バタフライのドルフィンキック

ドルフィンキックが他の3種目のキック動作と違うのは、ヒップからうねりが始まって両脚同時に足のつま先の鋭い下向きの蹴りで終わるという点にあります。

この動一連の動きは、キックアップとキックダウンの2つの部分に分けることができます。キックダウンを始めるときヒザは曲がった状態にありますが、足か下向きに蹴られるにつれてヒザが伸び、最も下に伸びたときヒップは最も水面に近づき出るくらいまでアップします。

キックアップは、ヒザが伸びた状態から足が水面に持ち上げられるところから始まり、かかとが水面を割って出るくらいのところまで続きま、このときヒップは少し水中に沈みはじめます。

ドルフィンキックは、これら脚やヒップのうねりの動作が連続してスムースに行われることによって、強力な推進力を生み出します。このヒップの動作に対して、肩は比較的水面に固定され、呼吸動作のときにだけわずかに水面上に上げられます。

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ドルフィンキックで陥りやすい欠点

ドルフィンキックの強力な推進力は、膝やヒップや足首がきちんと順番よく連動することによって得られます。一つでも順番が違うと鞭のようにしなるキックは打てないので、前進する推進力は著しく減少します。

1. キックダウン
キックダウンの時に膝が伸びたままだと、ドルフィンキックの最大の推進力を生むことができません。膝は連動してしなやかに曲がる必要があります。

また、ワンストロークにワンキックのバタフライでは1回のキックが深くなりがちですが、2キックのバタフライでは、上下動が大きくなり過ぎない深さに保たれるべきです。

2. キックアップ
キックアップの時に膝が曲がっていると、膝から下の脚で大きな抵抗を受けることになったり、ヒップが沈んで上体が起きてボディーポジションを変えてしまうことになったりします。

キックアップが終わった時、足が水面上に出過ぎると泡を水中に持ち込んでしまい、推進力が失われます。同時に膝が曲がる原因にもつながります。

3. 足首の柔軟性
推進力を生みだすところの足首に柔軟性がないと、両脚による強力なキックダウンを推進力に変えることはできません。

4. フラッターキック
泳法上のルールは、キックアップ、キックダウンともに左右の足が離れることはあっても、上下の位置が違って動くことを良しとしていません。つまり、上下左右にちぐはぐに動けば違反になります。

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バタフライの呼吸動作

バタフライの呼吸動作は、スムースな腕のリカバリーを妨げないで、ボディポジションにも極力小さな変化しかもたらさないものでなけれぱなりません。

そのためには、水上に上げ下げする頭の動きを最小に押さえる必要があります。水面に顎を上げて息を吸うときは極力アゴを水面に残し、頭を水面下に入れて息を吐くときはに、目は垂直に下を見て極力水平を維持します。

吸気のために頭を上げるタイミングは、腕のリカバリ_と調和がとれることが重要です。頭の動きは次のような順序で表すことができます。

  1.  吐息が終わりに近づくと、アゴを前方そして上方にあげ始める。このとき、手はキーホールプルの内側へのス力ーリングを始めます。
  2.  呼気は、手は互いに近づくポイントから、フォロースルーを始めるポイントの間に行います。
  3. 手がフォロースルーを完了するとアゴを下げます。呼吸の動作は腕が水中からリカバリーを始めるまでに完了します。呼吸が完了するとき、目はプールの底をみつめているべきです。

注:頭を上げるのがフォロースルーと同じくらいに遅れて行なわれても、アゴを下げるのは、腕のリカバリーが始まり次の動作に移る前に始められなければなりません。

よく見られる欠点

呼吸を行うののが遅すぎる

アゴを上げるのが、手がフォロースルーを終えてからだと、呼吸をするのが遅すぎてしまいます。この時点で頭が上がると、リラックスした状態でリカバリーできず、ストロークのリズムをも狂わせてしまいます。

頭の上げすぎ

暖気のと劃こ頭を高く上げすぎると、ヒップが沈み始めボディポジションが変わってしまうことがあります。

バタフライについて

水泳の記録から見ても、バタフライはクロールについで2番目にスピードのある泳ぎであることが分かります。速いスピードで泳ぐときには泳力を必要としますが、効率的な泳ぎをマスターすることで、他の三泳法と同じように楽に泳ぐことも難しいことではありません。

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[更新日]2018/08/05